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今月のコラム
支持率と“民度”

米国の共和党全国大会が8月30日から9月2日にかけてニューヨーク市で行われた。その最終日に、ブッシュ大統領が共和党の大統領候補として正式に指名された。もともとニューヨーク市は民主党の地盤が極めて強いところである。なぜブッシュ大統領は、この地を党大会の開催地に選んだのか。

同時多発テロからもうすぐ三年。テロ対策に大きな功績を残したと自負するブッシュ大統領が、この地で三年前の事件を呼び起こし、戦時に強い大統領のイメージを利用して、一気に対立候補を引き離そうとする戦略である。ニューヨーク市はこれまでにない緊張感に包まれた。開幕前夜から大規模な反ブッシュデモが起こり、逮捕者は延べ1800人に上った。

この大会に出席した共和党員にとっても命がけの旅行であった。もともと共和党の地盤が強いのは、カンザス、アイオワ、テネシー、テキサスといった中西部と呼ばれる州で、総じて所得水準も教育程度も低く、国際感覚ゼロの州である。ニューヨーク市民からすれば「田舎者」である。だが、「自分達こそが真のアメリカ人」と信じる傲慢な熱血漢が多いのもこうした州である。

この人たちがデモ隊と接触すると大変な混乱が起きかねない。彼らに無事に“お帰りいただく”ために、警察がフル動員された。到るところに監視カメラが設けられ、画像は無線で警察本部に送られ、お互いが接触することがないように警察官が巧みに誘導した。一部のデモ隊が大会会場となったマジソン・スクエア・ガーデンに侵入し、ブッシュ大統領の演説中に野次を飛ばす一幕もあったが、直ちに摘み出された。大会を抜け出した共和党員は警察に護衛されながらブロードウェイミュージカルを楽しんだ。

大会ではいろいろな人が演説をした。3年前の9月11日に夫を無くした婦人が演説して、当時を思い出させる演出や、民主党の地盤であるカリフォルニア州で共和党から州知事に当選したシュワルツネッガー氏の応援演説。ローラ夫人は勿論のこと、普段はメディアに顔を見せることのない双子の娘までが登場して選挙民の各層に訴える演説を行い、チェイニー副大統領は改めて一国行動主義を明確に打ち出し保守層に強く訴える演説を行った。

極め付きは、テロ当時のニューヨーク市長であったジュリアーニ前市長と民主党のはずれ者ミラー上院議員の演説であった。民主党員でありながら民主党に批判的なミラー議員は、民主党政策を批判し、ケリー候補をこき下ろした。他党の大会に出席して自党を批判する前代未聞の事件である。ジュリアーニ前市長は、テロ攻撃の三日後に現場に現れたブッシュ大統領と救出部隊との深い信頼と、テロ組織撲滅の新たな決意を、実録のごとく生々しく語った。

大会最終日の大統領候補受託演説の中で、ブッシュ大統領は「私は命をかけてアメリカ人の安全を守る」と宣言すると、会場からは「Four More Years」の大合唱が起こり大きな興奮に包まれた。内政問題でも次々と新しい政策を並べていく。再選を勝ち取るためには実現性を問わない。イラク戦争に膨大な戦費を使っている中でどうやって財源を調達していくのだろうか。冷静に考えれば、疑問ばかり湧いてくる政策であるが、大歓声は鳴り止まない。まるで戦前のナチの集会を見ているような気がして、恐怖感を覚えた。

一ヶ月ほど前にボストンで開催された民主党全国大会は、民主党が地盤の地での開催であり、警察官の動員数も少なかった。ケリー候補が各人の演説では大統領への個人批判は慎むように事前に指示していたこともあり整然と行われた。これに対し、共和党の大会は、対立候補の人格を卑しめ、信憑性を疑わせるような演説が続き、いささか趣が異なっていた。物々しい警備に囲まれての先鋭的な大会はアメリカ国民の間にも深い亀裂があることを改めて思い知らされた。

大会最終日のブッシュ大統領の演説が終わったときには、時計は夜の11時半を回っていた。それから、オハイオ州を遊説中のケリー候補の演説中継があると言う。民主党大会ではブッシュ大統領の個人批判はしないように注意をしていたケリー氏ではあったが、共和党大会で連日容赦ない個人攻撃を受けて業を煮やしたに違いない。「必要のない戦争に国民を間違って誘導したのは誰なのか」と反撃に転じたが、時計は既に午前零時を回っていた。

八月に入ってからケリー候補のベトナム戦争での勲章に疑問を投げる声があがった。共和党大会ではイラク戦争決定を巡ってケリー上院議員が最初は反対票を投じながら、その後の戦費支出の決議では反対に回るなど、一貫しない政治姿勢を厳しく批判された。これに対し、ブッシュ大統領の一貫してテロと戦う姿勢が評価されるようになった。共和党大会前には、ほぼ互角であった支持率が今ではブッシュ候補が10ポイントの差をつけてリードしている。

最近面白い調査報告書を目にした。カナダの世論調査会社グローブスキャン社が、アメリカ国外での両候補者の支持率調査を公表した。今年の7−8月に世界35カ国の3万4000人余に聞き取り調査を行い、その結果を集計した。それによると35カ国のうちケリー候補を支持しているのは30カ国にのぼり、ブッシュ候補を支持しているのはたったの3カ国しかない。

ケリー候補に軍配を上げた国の支持率の内訳を見ると、ノルウェー(74%対7%)、ドイツ(74%対10%)、フランス(64%対5%)、オランダ(63%対6%)、カナダ(61%対16%)、イタリア(58%対14%)、スペイン(45%対7%)、イギリス(47%対16%)、そして日本(43%対23%)となっている。日本もケリ−支持ではあるものの、その差は20%と先進国中最も少ない。米国の盟友イギリスですら31%の差がある。

アジア各国を見てみると、中国(52%対12%)、インドネシア(57%対34%)とケリー支持であるが、インド(34%対33%)、タイ(30%対33%)になると両候補の支持率はほぼ拮抗している。因みに、ブッシュ候補を支持しているのは、フィリピン(32%対57%)、ポーランド(26%対31%)、ナイジェリア(27%対33%)の3カ国である。

この調査では、ブッシュ大統領の外交政策によってアメリカに好感を持つようになったかとの切り口でも調査をしている。30カ国はむしろ反感を持つようになったと回答している。反感度の高い順に並べると、ドイツ(83%)、フランス(81%)、メキシコ(78%)、中国(72%)、カナダ(71%)、オランダ(71%)、スペイン(67%)、ブラジル(66%)、イタリア(66%)、アルゼンチン(65%)、イギリス(64%)の順になる。日本はこの下であるが、何%かは不明。

同調査会社の社長は、二つの切り口の調査で共通に見られるのは、教育水準と所得水準が高い国ほど、ケリー候補を支持し、アメリカに反感を持つ傾向が見られるとコメントしている。いわゆる“民度”が高いほどケリー候補を支持する傾向が鮮明に見られるというのである。本当であろうか?

これを検証するために、国別にケリー候補の支持率からブッシュ候補の支持率を差し引いて“民度”の低い順に並べてみた。

フィリピン(−25%)、米国(−10%)、ナイジェリア(−6%)、ポーランド(−5%)、インド(1%)、タイ(3%)、日本(20%)、インドネシア(23%)の順になる。いわゆる先進国と言われる国々の中で、米国と日本の“民度”が最も低いようである。


カリフォルニア州メンロパーク市にて
安藤 茂彌
日経ネット・企業・コラム・海外VBトレンドに掲載(2004年9月13日)

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